So-net無料ブログ作成

中村彝(つね)アトリエ記念館 [東京]

DSC03978.JPG




かつて『下落合焼きとりムービー』というB級映画があった。

これはアメリカ映画『ケンタッキー・フライド・ムービー』のパロディ版で、企画・原案は赤塚不二夫。

監督は山本晋也、出演はタモリ・所ジョージ・柄本明などなど、そうそうたる顔ぶれであった。

しかしながら、内容は全く覚えていない。

内容がナイヨーなのである。(笑)

いや、悲しいくらいの駄作だったことだけは記憶しているが、西武新宿線の「下落合」を通るたび、真っ先に思い起こすのがこの映画である。

……と、同じような前説をどこかで書いたことがある。

はい、思い出しました。

こちら『旧佐伯祐三邸』でございます。

同じ下落合にあるアトリエなので、宗男はどうしても焼き鳥ムービーを思い出してしまうんです。(笑)

以下記事は、カチカチのお堅い機関誌からの再録なので、いつもより笑いのトーンは落ちております。

検閲が厳しいゆえやや堅苦しい面もございますが、ご事情察しの上、ご容赦願います。(ぺこり)



 

DSC04025.JPG



そんな「下落合」であるが、この付近はかつて多くの作家や画家達が住んでいた、目白文化村の一角として有名な土地柄である。

作家・林芙美子、画家・佐伯祐三、刑部人(おさかべ じん)、島津一郎など、今回取り上げる中村彝(つね)もその一人。

もちろん赤塚不二夫も一時この地域に住んでいたらしいが、焼きとり屋はあまり多く見掛けない。(笑)





 

DSC04029.JPG



この建物は大正5年(1916)に、中村彝のアトリエ付属住宅として新築されたもの。

設計・施工者は不明であるが、彝自身が建設に関わったとも言われている。

亡くなる大正13年(1924)までここに住んでいたというから、わずか8年程度しか住んでいない計算だ。

その後、洋画家・鈴木誠が住み、調査、解体、復元・整備を経て、平成25(20133月に「中村彝アトリエ記念館」として開館された。

画家のアトリエとして継承されたので手入れも良く、材料も当時のままのものを多く再利用できたらしい。



 

DSC03984.JPG



中村彝といっても、あまりピンとこないお方も多いのではないだろうか? 

確かに、超メジャー級の画家ではないが、マネのマネ(笑)、いや、マネの「オリンピア」を彷彿とさせる「婦人像」などは、今でもディープなファンが少なくない。

この「婦人像」のモデルとなったのが、新宿・中村屋の長女「俊子」である。

あの、インドカリーで有名な中村屋のこと。

創業者である相馬愛蔵・黒光(良)夫婦は、本業のパン作りだけではなく、美術・演劇・文学・その他幅広い分野に影響力があった。

荻原碌山、内村鑑三、高村光太郎、會津八一、ワシリー・エロシェンコなどなど、各界の多彩な顔ぶれとの交流が見られる。

いわゆる「中村屋サロン」。

平たく言えば芸術家のパトロンだが、この中村屋の裏にあるアトリエに居候していた一人が中村彝であった。

同じ中村姓だが、親戚でもなんでもない。

彝は、ただ「親切なお方だな」と思っていたに違いない。(笑)

※この記事が書かれたころは、某東京都知事の疑惑が騒がれた時で、(笑)とある上記の言葉が大流行した。今となっては全く笑えないので、時事ネタは一発屋と同じくすぐに忘れられる運命である。(宗男注)



明治44年(1911)、22歳の彝はここで黒光の娘・俊子をモデルに裸婦像を描く。

まあ、必然的に恋愛感情へと繋がるわけだが、この恋は実らず、失意のもとに彝は大島へ渡り、そして下落合のアトリエで生涯を過ごすこととなる。

その後、俊子は同じく居候のインド人革命家ラス・ビハリ・ボース氏と結婚するが、中村屋がカレーを売り始めたのは、このボースの作ったカレーが始まりである。



DSC04018.JPG 

建物の外観は焼き過ぎ、いや焼き杉のような黒褐色の下見板張りで、白い額縁を回した縦長のギロチン窓が強烈なコントラストをなしている。

屋根はスペイン瓦風の平瓦で、棟には「鴟尾」(しび)とも「吻」(ふん)ともつかない棟飾りが載せてある。

ふーん、と感心する。(笑)

芝生に面した開き戸にも小さなパーゴラがあって、ここから庭への出入りをしていたのだろう。

アトリエの採光窓は、北向きにあって、アプローチからは見えない。

一見して、ここが画家のアトリエだとは誰も気付かないだろう。



 

DSC03981.JPG




内部は、欄間の付いた大きな4枚建て引違窓と、屋根面のトップライトがアトリエとしてのクオリティーの高さを示している。

天井を折り上げることによって、採光の方向性を規定して、もう採光!

いや、最高!の出来である。(笑)

壁には、作品にもしばしば見られる小さなニッチも付いている。

画家のアトリエとしては、遊び心満載の、機能とデザインがマッチしたハイセンスある空間である。

とても大正5年に建てられた建物とは思われないモダンな建築だ。



17歳で肺結核を患い、そのために俊子との恋もかなわず、享年37歳という若さで夭折した天才画家。

カルピスが好きだった画家。

残念ながら、残した作品数は多くないが、印象に残る画家の一人である。

西武新宿線の「下落合」を通ったら、焼きとりを思い起こす前に、つねに中村彝(つね)を思い起こしていただきたい。(笑)



DSC04003.JPG



★中村彝アトリエ記念館

竣工:大正5年(1916

復元:平成25年(2013

設計・施工:不明。

構造:木造平屋建て。

場所:東京都新宿区下落合3-5-7




nice!(47)  コメント(12)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

nice! 47

コメント 12

imarin

大正に造られたとは思えない素敵な建物ですね。
まさに自分が住みたいと思っている家です。
これをこのまま信州に移築してのんびり暮らしたい。
相変わらずダジャレが粋!
by imarin (2015-05-29 09:45) 

ふゆん

壁の色いいなあ
こんな色にしたい(・∀・`)
by ふゆん (2015-05-29 10:40) 

まつみママ

ハ~~イ  コン二チワ~ (^^♪
pc ポチッ!で まさかのご訪問足跡(笑) 早速参上いたしましたvv
今回の【中村彝アトリエ記念館 】 
初めて知った画家のお話も 大変興味津々で楽しめました
新宿 中村屋と言うと この名で即 頭に浮ぶのが ” 肉まん” (笑)
確かに 一時凄い人気 商品でした。
そんなロマンチックな物語が有ったとは 知る由も有りませんし
けど 宗雄さんの子細な紹介文には建物以外にも
内容そのものに色添えて下さるので とっても柔和で楽しめます
又次回も頑張って宜しくお願いいたします<(_ _)>楽しみにしてますvv
by まつみママ (2015-05-29 11:39) 

カンパネルラ

お久しぶりです。まだ下落合焼き鳥ムービーは見てないんです。
見たいと思って何年経つのだろう?ツ○ヤさんにも見かけない気もします。
下落合と言えば、佐伯のアトリエなんですが、こんなのもあるんですね。
中村さん存じ上げなかったです。実際に見学しに行ってきます。

最後の1枚、こういうのニッチって言うんですね。最近、こういうお洒落なニッチを時々みます。
by カンパネルラ (2015-05-30 02:26) 

あおい君と佐藤君と宗男議員

>imarinさま
いいですね、信州に移築。
下落合よりもお似合いかと。
こじんまりとしてて、のんびり手入れしながら住めば、長く住める住宅です。
ダジャレ、お褒めいただいて、アリが十匹、いや、ありがとうございます。(笑)

>ふゆんさま
壁の色、いいでしょう。
でも、外壁のことか内壁のことかどっちなんだろう?(笑)
ふゆんさまの写真はいつも素敵ですね。

>まつみママさま
こんにちわです。
おお、中村屋と言えば肉まんですか。
あそこは、カレーパンも美味しいですよね。
宗男は、普通のインドカレーが大好きです。
ロマンチックな物語というよりも、カレーと同じで、ちょっとドロドロしております。(笑)
次回もがんばります!

>カンパネルラさま
お久しぶりです。
焼き鳥ムービー、見ないほうがいいような気が。(笑)
ここは2年前の復元なので、まだ周知されていないかもしれませんね。
佐伯のところは、改修されすぎで評判が悪いですが、ここはその辺を考慮したと聞いております。
ニッチについて、下手に設計するとニッチもさっちも行きません。(笑)
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2015-05-31 12:14) 

八犬伝

焼鳥は
レバーたれ、ねぎまたれ、手羽先塩
だな。
by 八犬伝 (2015-05-31 13:58) 

ヴェルデ

元西武新宿線沿線住民です。
下落合!
おりたことないな~。
でも宗男議員がいろいろ教えて下さるので、
探索してみたくなりました。
ステキなアトリエですよね。

西武新宿線はなかなか庶民的で、
下落合ならぬ上井草はガンダムで有名だし、
東村山の発車ベルは東村山音頭です。
by ヴェルデ (2015-06-01 00:52) 

高穂

いや.ケンタッキーフライドムービー…(以下略

建物.外観はなにやら掘建て小屋みたいだけど,
内部は光が丁寧にまわって素敵ですー*
保守やお手入れも力が入ってそうでございますー
ガラスは現代の物になってるっぽい
って言うか最近のフルーツカルピスのうまさが尋常でない…(以下略

by 高穂 (2015-06-01 11:21) 

あおい君と佐藤君と宗男議員

>八犬伝さま
はい。
あたしはレバーたれですね。
最近の白レバーってのは、どうも……
生焼のようで嫌なんです。(笑)

>ヴェルデさま
下落合、なかなかいいところです。
そこそこのデートスポットですよ。
中村つね、佐伯祐三、林芙美子とお散歩ルートになってます。
彼氏、もしくは旦那さんと行ってみてはいかがでしょうか?

>高穂さま
ええ!
最近のフルーツカルピスって、飲んだことがありません。
美味しんですね。
今度、飲んでみます。

建物内部は、狭いんですけど、アトリエが充実していて
とっても素敵ですよ。

by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2015-06-03 09:47) 

nicolas

下落合!私住んでたことありますー
目白の文化村ですかー
小さなキッチンの付いたアパート、学生の身分だったので知らなかったです。
北の屋根からの明り取り、のこぎり屋根の工法と同じですね。
パッと見、トトロのさつきの家のパパの書斎ぽくも見えます。
ニッチといえば、家を建てた際、設計図にはあったのに作ってもらえなかったニッチが二か所・・・今でも、何気に残念です。
by nicolas (2015-06-03 22:32) 

あおい君と佐藤君と宗男議員

>nicolasさま
おお、下落合住民でしたか?
いいところですね~。
焼き鳥屋さんは少ないけど。(笑)

そうそう、のこぎり屋根と同じ発想です♪
ニッチは、意外と造るとなると面倒なので、造ってもらえなかったんですね。
でもんちゃんと見積金額には入っていたかも……ですね。
ニッチがなくてもリッチに暮らしてください。(笑)
by あおい君と佐藤君と宗男議員 (2015-06-05 00:03) 

二兎丸

絵本の『ちいさいおうち』みたいでかわえぇ(*‘∀‘)♪

下落、高校生の頃近くに一時住んでた。その後、狭山まで引っ込んだけど。
西武線と言えば、原武史の『レッドアローとスターハウス』を
中身も確かめずにジャケ買いして、開いてみてビビった(笑)
色んな意味で濃い人達が住んでたのねあの沿線。
by 二兎丸 (2015-09-05 09:55) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。

×

この広告は1年以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。